ステレオアンプ...page.1/9


はじめに...

オーディオ回路とは、人間に聞こえる音(可聴周波数:約20Hz〜20KHz)を扱う回路のことです。
どんなに複雑な回路でもデジタル信号であろうと最後はスピーカーやヘッドホンで人間の耳に聞こえる音になるわけです。

ここでは気軽に使えるステレオアンプを紹介し、今後スピーカーシステムも含めた自作オーディオを楽しんでみましょう。
部品の説明や製作についてホームページで私なりに詳しく述べたつもりです。



概要

手持ちのチューナーや、CDプレーヤ又は、ヘッドホンステレオなどを接続して、気軽にスピーカーを鳴らすステレオアンプです。
アナログディスクを再生する「RIAA-EQアンプ」についてはソフトの普及率から省いています。
アクセサリー回路として「トーンコントロール回路」を設けています。

小信号回路はデジタルボリュームICや、DCボリュームコントロールICなどの使用が考えられますが、プログラムの作成や、無信号時のノイズ、入力信号電圧の制限が気になるのでディスクリート構成(ICを使用せず個々の部品で構成)としました。

オーディオアンプを製作する上でコストが掛かる「電源部」については、ローコスト化、成功率から市販のACアダプターを使用しています。
このため電磁シールドなど気を使う必要がなくなり、多少のクロストークを覚悟して、配線材料にはシールド線を使っていません。

※ACアダプターには「スイッチングタイプ」のものを使って下さい。



ブロック図




回路図

R1=1KΩ、R2=120KΩ、R3=100KΩ、R4=4.7KΩ、R5=15KΩ、R6=15KΩ、R7=15KΩ、R8=4.7KΩ、R9=4.7KΩ、R10=220KΩ、R11=150KΩ、R12=4.7KΩ、R13=220Ω、R14=2.2KΩ、R15=470Ω、R16=22KΩ、R17=10KΩ、R18=560Ω、R19=2.2Ω、R20=2.2Ω、R21=4.7KΩ、
VR1=10KΩ(A)、VR2=100KΩ(B)、VR1=100KΩ(B)、
C1=4.7μF、C2=4.7μF、C3=0.027μF、C4=0.027μF、C5=0.0015μF、C6=4.7μF、C7=4.7μF、C8=100μF、C9=220μF、C10=4.7μF、C11=33μF、C12=220μF、C13=0.15μF、C14=0.15μF、C15=470μF、
Tr1=2SC1815Y、Tr2=2SC1815Y

回路の説明

入力は2系統あり、スイッチにより選択します。3系統以上ですとロータリースイッチを使う必要があり、製作予算が高くなります。
ボリューム:10KΩ(A)により音量調整します。
記号で(A)と記していますが、これはAカーブ特性のボリュームを使うことを意味します。Aカーブ特性のボリュームは全回転角の中で中間くらいまでは抵抗の変化が緩やかなタイプです(対数変化)。これは、よく聞く小音量時の音量調整が行ないやすいことを意味します。
音量調整ボリュームにBカーブ(直線変化)のものを使うと少し廻しただけで大きく音量が変化してしまい音量調整がしにくくなります。

音量調整された信号はエミッタフォロワ回路に入り、次に接続するトーンコントロール回路の為に低インピーダンスで信号を出力します。
エミッタフォロワ回路はトランジスターのコレクタ接地回路で、電圧増幅度はほぼ1倍ですが電流増幅が大きい回路です。

トーンコントロール回路は作りやすさから「NF型」を使いました。
NF型は増幅器(Tr2で構成)の帰還回路に周波数特性を持たせた回路です。
VR2で低音(BASS)調整、VR3で高音(TREBLE)調整を行ないます。
いずれもボリュームの矢印が左側に移動(エミッタフォロワ側に)するとブースト(増加)、右側に移動するとカット(減衰)されます。
詳細と設計(定数算出)は下部を参照して下さい。
ここで用いる増幅器(Tr2で構成)は、一般的なエミッタ接地回路です。

パワー段は作りやすさからICを使う方が近道です。
最近のオーディオパワーICはリード線が千鳥足で間隔も狭いZIPパッケージを多く見かけますが、ここで使った東芝:TA8201AKはリード線が2.54mmvピッチでICユニバーサル基板にぴったりで、リード線も7本と少なく組み立ても容易です。
TA8201AKはBTL接続専用のオーディオパワーICで、電源12Vで13W(4Ω)の出力が得られるようですから、8Ωのスピーカーを使っても5W以上の出力は期待できます。
一般家庭で気軽に音楽を楽しむには5Wは贅沢かも知れません。

TA8201AKの推奨回路ではゲイン(増幅率)は54dB(約500倍)と高めで残留ノイズも気になりますから、ゲインを40dB(100倍)に下げ残留ノイズも下げています。しかし、40dBではまだ高すぎで、使い易くするには30dB(約30倍)としたいところです。TA8201AKでは40dB以下で使うには動作不安定とありますから、入力にアッテネータ(減衰器)として抵抗:R16、R17(10KΩ、22KΩ)を接続してトータル約30dBに仕上げています。
仕上がりゲイン30dB(約30倍)では低いと思われるかも知れませんがトーンコントロールで低音をブーストした場合を考えると丁度よいのではと思います。

例えば、CDプレーヤの出力電圧が、平均0.2V(200mV)となっている場合、製作するステレオアンプの出力電圧は...

0.2×30=6〔v〕で、パワーは...

8Ωスピーカーを接続した場合の出力電力は、V2/R=62/8=4.5〔w〕、
4Ωスピーカーを接続した場合の出力電力は、V2/R=62/4=9〔w〕

となります。

その他、本機の電源を入れるとパイロットランプ(LED)が点灯するようにしています。


NF型トーンコントロール回路の部品定数の算出

回路を自分で設計して、それを作ってみたい、また、ノイズを低減するため、トーン調整のボリュームに50KΩと低めのボリュームを使いたいという方も居るかと思います。ここでは、NF型トーンコントロール回路についてのみ、部品の定数算出方法を記述します。

「NF型」トーンコントロール回路は、真空管アンプの時代から親しまれている回路であり、現在まで大きな回路の変更はありません。
NF型トーンコントロール回路では低音(BASS)、高音(TREBLE)の調整ボリュームにBカーブ特性(回転角と抵抗変化が直線)のボリュームが使えるので機械的な中間でフラットな周波数特性が得られる回路です。

その他にCR型トーンコントロール回路がありますが、Aカーブ特性のボリュームを使うので、紹介した回路定数でそのまま使えるとは限りません。それはボリュームの製造メーカーによってAカーブの変化の度合いが全く同じとは言えないからです。


算出をし易くするために「低域調整、高域調整のボリュームに同じ抵抗値の物を使う」、「低域、高域とも同程度の増加・減衰量とする」、「回路図においてR5=R6=R7とする」の3つを条件として計算式を記述します。3つの条件により、式は大変に簡単になります。
尚、式の導き方については虚数なども使い説明が大変に長くなるので専門書で勉強願います。

一般に800Hz〜1KHzを中心として低域と高域を分け、どの当たりの周波数から増加・減衰をさせるか決めますが、これは経験しなければなりません。
例えば低音(BASS)についての調整は1KHzから増加・減衰をして、高音(TREBLE)の調整も同じ1KHzから増加・減衰をするようにした場合は、低音・高音調整で共にブーストした場合に1KHzもかなりなレベルで増加してしまい、結果として音量も増加することになります。逆に、低音・高音を共にカットした場合は全体の音量がかなり減衰してしまいます。このことは誰もが予想できましょう(図A)。
私の経験から、低音が増加・減衰する周波数は350Hz〜450Hz、高音については2KHz〜3.5KHzです。この周波数付近で定数を決定するとフィーリングの良いトーン調整が行なえます(図B)。
最大増加量・最大減衰量は20dB程度(6倍〜10倍)は欲しいところです。

使うボリュームの抵抗値に、・・・100KΩ
最大増加量・減衰量に、・・・7倍
低音が増加・減衰し始める周波数に、・・・400Hz
高音が増加・減衰し始める周波数に、・・・3000Hz(3KHz)
として、式に当てはめてみて、回路図の近似値となるか確認してみましょう。


回路についての勉強よりも、まず作ってみるということが最も大切なことです。

トーンコントロール回路は位相ズレや周波数特性にうねりが生じるなど
嫌う人がいますが、まず自分で実際に作ってみて下さい。



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