水位報知器(お風呂ブザー)...page.1/5


概要

水道水は僅かに電流を通すことができます。ここでは水道水の抵抗を検知して電子音を生成させる「お風呂ブザー」を作り、紹介致します。
お風呂にお湯や水を張る際に、いちいち「適当な水位になったかな?」などと何度も確認する必要がありません。また、お湯や水の垂れ流し状態も予防できます。
当回路はお風呂ブザーの用途以外にも、オムツの濡れを検知したり、雨が降ってきたことを検知することができます。
回路にはデジタルICであるシュミットトリガ入力タイプのNOTゲートを中心に組み上げています。



デジタル回路のシュミットトリガ入力の概要

デジタル回路は「1か0」、「hight(H)かLow(L)」又は、「高電位か低電位」の2状態の信号を扱い、実際のデジタル回路の入力は、何ボルト以上の入力でHレベルと判断されるか、何ボルト以下の入力でLレベルと判断されるのか、何処かに境目があります。この境目のことを、「しきい値」又は「スレッショルドレベル」といいます。入力の電圧がスレッショルドレベル付近の時は、HレベルかLレベルか微妙な部分で不安定な動作や誤動作の原因となります。従って一般のデジタル入力はHかLの2状態のハッキリとした信号を入力しなければなりません。
シュミットトリガ入力とは、曖昧な(アナログ的な)信号を扱えるようにしたものです。その様子は下の図に示した通りで、Hレベルだと判断されるスレッショルドレベル(Vthh)と、Lレベルだと判断されるスレッショルドレベル(Vthl)の2つのスレッショルドレベルが存在するのが特徴で、入力電圧がVthh以上となりHレベルと判断されると、入力電圧がVthhを下回ってもまだHレベルを維持し、Vthl以下にならないとLレベルと判断されません。LレベルからHレベルと判断されるには、入力電圧がVthl以上のVthhになった時です。
図で解るように多少のノイズが混入している信号に対しても有効なものです。

※当然、シュミットトリガ入力に2状態のデジタル信号を入力しても構いません。
※VthhとVthlの値は使うICのデータを参照する必要があります。
※シュミットトリガ回路は本来アナログ回路ですから、詳しくはアナログの書籍を参照下さい。

今回は「水の抵抗を感じたか、感じないか」の2状態ですが実際はそうではなく、水にちょっぴり触れた状態から完全に浸した状態まで水の抵抗値はアナログ的に変化しますのでシュミットトリガ入力を使った次第です。



NOTゲートとは

NOTゲートとは0か1かの信号を扱うデジタル回路の「組み合せ基本ゲート回路」の一つで、Hを入力するとLが出力され、Lを入力するとHが出力されるゲートです。NOTゲートは否定回路とも呼びます。下に論理図と真理値表を示します。NOTゲートは入力・出力とも一つです。
参考に他の基本ゲート(組み合せゲート)であるANDゲート(論理積回路)、ORゲート(論理和回路)、NANDゲート(NOT+AND)、NORゲート(NOT+OR)、Ex-ORゲートについても示しておきます。論理図はMIL記号(軍用規格)と致します。






シュミットトリガNOTゲートの論理図





シュミットトリガ入力NOTゲートを使った発振回路

シュミットトリガ入力のNOTゲートを使った最も簡単な発振回路は下に示すよう1個のコンデンサCと1個の抵抗Rだけで構成できます。
発振周波数はCとRの積に反比例します。
※正確な周波数を求めるには、CとRの他、電源電圧とVthh及びVthlを知る必要があり、算出するには関数(logと自然対数の底e:In)を使いますが説明が長くなるので省略させて頂きます。





当発振回路はRを介してCの充放電により発振が行なわれ、ダイオードを挿入して充電・放電時の時定数(CR)を別個にすることで波形のデューティー比を変えることも出来ます。





発振のON、OFF(発振させる、させない)の制御を行なうには入力にダイオードを接続して入力を強制的にL又は、Hにさせます。







回路図




回路の説明

水の抵抗を感じた場合を説明します。

6/6の入力(13pin)は510KΩでGND(グランド:0V)に接続され普段はLレベルになっていますが、水の抵抗を感じると、電位が上がりHレベルに至りますので、6/6の出力(12pin)はLレベルとなり、次に接続される1/6の出力(2pin)はHレベルになります。
2/6は発振回路を構成し、先に説明した入力側のダイオードの向きから、入力(3pin)がHレベルの時に発振を行なうようになっていますので発振が行なわれます。ここの発振周波数はおおよそ8Hzであり、出力(4pin)は8Hzの周期でLレベルとHレベルが交互に出力されます。
3/6も発振回路を構成し、入力側のダイオードの向きから、入力(5pin)がLレベルの時に発振を行なうようになっており、ここでの発振周波数はおおよそ1KHzです。
即ち、3/6の出力(6pin)は前段の2/6から出力される8Hzで断続された1KHzの信号が出力されます(「ピピピ・・・」という音)。
この信号は1KΩを介してトランジスタで増幅しスピーカを駆動します。


次に水の抵抗を感じていない時を説明します。

6/6の入力(13pin)は510KΩでGND(グランド:0V)に接続されLレベルになっていますので、6/6の出力(12pin)はHレベル、1/6の出力(2pin)はLレベル、2/6の出力(4pin)はHレベル、3/6の出力(6pin)はLレベルとなります。

水の抵抗を何も感じていない時は、最終段の3/6の出力(6pin)はLレベルになっている必要があります。
それはスピーカを駆動するトランジスタがカットオフ状態でないとスピーカに電流が流れて無駄な電力を消費してしまうからです。



当回路は水の抵抗を感じると音響出力するものですが、電池が消耗していると音は出ません。
その為に電池があるか確認するためのパイロットランプは必要でしょう。
ここでは5/6と4/6のシュミットトリガNOTゲートで1.5Hz間隔で「チカッ、チカッ・・・」とLEDを点滅させる回路を構成しました。
電池が少なくなって発振停止状態になってしまうのであれば、LEDも点滅しないので、水の抵抗を感じても音は出ません。
即ち、LEDの点滅が弱くなってきたならば電池交換の時期ということになります。

LEDを常に点灯状態で電池の有無を監視する方法では電池の消耗が早くなりますが、時々光らせる方法ならば電池の寿命は長くなります。

尚、LEDが一瞬点灯する際は電源電圧より高い電圧がLEDに掛かるような回路になっていますので閃光のような光り方を致します。
(4/6のNOTゲートには大きな負担ですが...)


※NOTゲートを、1/6とか、2/6、5/6と述べましたが、使うICの中にNOTゲートが6個入っているためです。
※本来ならばスピーカ端子に逆起電力を吸収するダイオードを接続しますが電源が3Vと低いために無視致しました。
※当回路は4/6と3/6のゲートに負担を掛けたものになっていますが電源が3Vと低いので無視致しました。


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