イヤホン式ICラジオ...page.1/8


はじめに

電子工作においてラジオ工作は飽きることがない工作ではないでしょうか?
私は、ゲルマニウムラジオから始めた電子工作の趣味は現在でもラジオ工作が多いです。
ラジオは、高周波回路、低周波回路、場合によってはデジタル回路も含めた総合的な電子工作物で、電子回路を触れたり、学ぶ上で最適な回路といえます。



概要

イヤホン専用のラジオ回路です。
ひとり静かにラジオを聴いたり、深夜放送を楽しみたいときにピッタリな手作りラジオです。
クリスタルイヤホンではなく、市販されているマグネチックイヤホンが使えるようにしました。

主回路には3端子ラジオICで知られるLMF501Tを使いました。
ラジオ回路を学ぶ上でICを使うのは意に反していますがラジオ工作を堪能して下さい。

回路の電源供給はイヤホンのプラグの抜き差しで行ない、電源スイッチを省いています。
このため完成後の使い方はとても簡単なのです。

回路は乾電池1本(1.5V)で稼動します。



回路図





IC LMF501T R3 220Ω
Tr 2SC1815Y R4 33KΩ
L ストレートラジオ用バーアンテナ R5 22Ω
VC ストレートラジオ用ポリバリコン C1,C2,C5 0.1μF(セラミック)
R1 100KΩ C3 4.7μF/50v
R2 1KΩ C4 1μF/50v




回路の説明

電源ラインにイヤホンを差込むことで回路に通電されます。
回路電流はイヤホンを通して流れるようになっています。
市販されているマグネチックイヤホン(普通のイヤホン)の直流抵抗は8Ω(オーム)〜32Ωとなっており、この程度の抵抗分では回路の動作に殆ど影響しません。
以上のことからインピーダンスが非常に高いクリスタルイヤホンでは使えません。
また、イヤホンには回路電流が常に流れますが数ミリアンペア程度で破損することはありません。

イヤホンでは音声信号による回路電流の変化を捕らえるようにしています。
3端子ラジオICで知られる、ミツミのLMF501Tからの音声信号をトランジスタにより増幅し、充分な音量になるよう回路電流を増減させています。

LMF501Tの電源は音声信号が重複した電源をそのまま接続すると異常発振の原因となるのでC3、R3によるデカップリング回路を設けています。
このデカップリング回路によって変動の少ない安定した電源をLMF501Tに供給できます。

イヤホンで得られる音声の強弱はトランジスタのエミッタ抵抗:R5でほぼ決定されます。
回路では22Ωとしました。
ここの抵抗は回路の消費電流にも大きく影響してきます。33Ωや47Ωと大きくすると音量は小さくなりますが消費電流は低下します。

消費電流は先のトランジスタのエミッタ抵抗:R5でも変化しますが、ここに用いるトランジスタの品種でも大きく変化致します。
これはhfe(直流電流増幅率)の違いによるものです。
2SC1815(Y)では3mA前後、2SC1815(GR)では5mA前後となります。
hfeの大きなトランジスタを用いて回路電流を増加しても音声の大小は判断できませんでした。
このことは2SC1815(O)と2SC1815(GR)で比較しても判断できなかったことを報告しておきます。
手持ちに2SC1815(BL)はなかったので試していませんが変化はほぼないと思われます。

このことから、回路に用いるトランジスタは2SC1815の場合ではhfeが比較的小さなYランク又はOランクを選択するといいでしょう。
今回は入手がとても容易な2SC1815(Y)を使いました。

回路電流はトランジスタのベース抵抗:R4によっても変化します。
この抵抗の変更による音声の大小はあまり実感できなく、音声の歪み感の変化が確認できました。
聴きやすさと回路電流のバランスで33KΩと決めました。

イヤホンジャックには並列に0.1μFのコンデンサ:C5を接続します。決して省かないで下さい。
ここのコンデンサは電源ラインを高周波領域に対してインピーダンスを低くして回路動作の安定に貢献するもので、音質調整ではありません。
このコンデンサは4700pFでも充分機能します。このコンデンサを省くと感度はかなり低下してしまいます。
当然ながら大きな容量にしますと音質にも影響してきます。4700pF〜0.22μF程度では音質に影響しません。
このコンデンサの有無による感度の違いは大きく、実験好きな方は外してみて感度の違いを確認してみて下さい。

尚、ここのコンデンサ:C5によって、イヤホンを差していないときに電池が消耗することはありません。
コンデンサはもともと直流を通さない部品だからです。

回路図中に破線でアンテナの記号がありますが、放送電波が受かりにくい地域に限って50cm程のリード線を接続して下さい。
通常の場所であればアンテナのリード線がなくても、バーアンテナコイルのみでローカル局は受信できます。


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