2石トランジスタラジオ...page.1/6


はじめに...

2石(2個のトランジスタの意味)でスピーカーを鳴らすことができるトランジスタラジオです。


 パーツレイアウトについて貴重な情報を頂きました。

ここに紹介した2石トランジスタラジオを作られたオズマローテク工房さまより大変貴重な情報を頂きました。
page.4/6に絵解き図を掲げており、トランジスタ回路基板にバーアンテナコイルも一緒に搭載していますが、バーアンテナコイルを回路から遠ざけて作ると良好な結果になるようです。
このことはオズマローテク工房さまの動画をみると明らかです。オズマローテク工房さまはトランジスタのhfeランクによる感度の違いも動画で紹介しているので参考にリンクを貼っておきます。

下の写真はオズマローテク工房さまとお友達が作られたラジオです。
左のラジオはホームページで掲げたバーアンテナコイルの取り付けの仕方ではなく、感度を確認しながら取り付け方法を試みてタイラップ(インシュロックタイ)でバーアンテナコイルを取り付けたとの事です(スズメッキ線で固定すると感度が落ちるとの事)。
右のラジオはyoutubeで確認したとおりトランジスタ回路とバーアンテナコイルを離して取り付けたとの事です。



以上のことから、これから2石トランジスタラジオを作ろうとされている方は、バーアンテナコイルはトランジスタ回路基板内に固定せず、ケース加工に入る前にラジオを動作させてバーアンテナコイルをどうレイアウトすると感度が最良になるのか確認してからケース加工に取り掛かるようにしてください。
私もオズマローテク工房さまの実験を参考に作り直して改めて報告してみたいと思います。

【2019.10.23追記】

その後、当ホームページの掲示板にもバーアンテナはスズメッキ線で固定しないこととありましたので既に作ったラジオのバーアンテナを固定しているスズメッキ線を切ってみました。
下の写真の×部分の2ヶ所を切断。
すると感度がグンと上がったではありませんか!!!音も大きいです!!!



以後、紹介のページではバーアンテナをスズメッキ線で固定している説明をしていますが、バーアンテナは接着剤またはホットボンドで固定するようお願いします。
作りやすさを優先してしまいツメが甘かったと大反省です。このようなことがあるからラジオ作りは楽しいんですよ。


この場でオズマローテク工房さまと掲示板の皆様に感謝申し上げます。



概要

1石レフレックスラジオ回路と1石スピーカーアンプ回路を組み合わせた構成です。
レフレックスラジオ回路は1個のトランジスタで高周波増幅(放送電波の増幅)と低周波増幅(音声信号の増幅)を行なわせるラジオ回路です。
検波ダイオードにシリコンダイオードを使ってみました。



ブロック図



青線が高周波信号(放送電波)、赤線が低周波信号(音声信号)になります。

同調回路 バリコンによってLC共振周波数を変えて目的の放送電波に同調させる。
高周波増幅 同調回路から受けた高周波信号を増幅する。
低周波増幅 音声信号を増幅する。主に電圧増幅を行なわせます。
検波 音声信号で変調された高周波信号から音声信号を取り出す。
音量調節 検波出力から受ける音声信号レベルを変更する。
電力増幅 音声信号を電力増幅してスピーカーを駆動する。電圧増幅も行なう。



回路図

初めて電子工作をされる方には難しく見えてしまうかも知れませんが、後述する絵解図を見てもらえば簡単な回路なので大丈夫です。





Tr1:トランジスタ:2SC1815-GR R1:1/4W炭素皮膜抵抗:1MΩ C1:積層セラミックコンデンサ:0.01μF C7:16V電解コンデンサ:220μF
Tr2:トランジスタ:2SC1815-GR R2:1/4W炭素皮膜抵抗:1MΩ C2:積層セラミックコンデンサ:0.47μF C8:16V電解コンデンサ:220μF
D:ダイオード:1N4148 R3:1/4W炭素皮膜抵抗:10KΩ C3:積層セラミックコンデンサ:0.47μF VC:ストレート用ポリバリコン
T:小型トランス:ST-32 R4:1/4W炭素皮膜抵抗:1KΩ C4:積層セラミックコンデンサ:100pF SP:8Ωスピーカー
L1:バーアンテナ:SL55GT R5:1/4W炭素皮膜抵抗:330KΩ C5:積層セラミックコンデンサ:0.047μF Jack:イヤホンジャック
L2:チョークコイル:4mH R6:1/4W炭素皮膜抵抗:100Ω C6:50V電解コンデンサ:2.2μF BATT:006P 9V




回路の説明

信号の流れに沿って説明してみます。

記号 定数 私なりの説明
L1 SL55-GT バーアンテナコイルで、バリコン:VCと組み合わせて同調回路を構成します。高周波信号はバーアンテナコイルの2次巻線から取り出し、トランジスタ:Tr1のベースに入れて高周波増幅を行なわせます。
VC バリコンになり、バリアブルコンデンサ(可変容量コンデンサ)の略で、シャフトに取り付けたツマミを回すと静電容量が変化します。
このためバーアンテナコイル:L1と構成する同調回路の共振周波数が変化するので目的の放送電波(周波数)に同調させることができます。
Tr1 2SC1815-GR このトランジスタでレフレックスラジオ回路を構成します。
トランジスタには、B(ベース:注入)、C(コレクタ:収集)、E(エミッタ:放出)の3本の電極があって間違えると動作しないよ。
R1 1MΩ トランジスタ:Tr1のバイアス抵抗です。この抵抗でトランジスタ:Tr1にベース電流を僅かに流してTr1を使える状態にします。
C1 0.01uF バーアンテナコイル:L1の2次巻線の一方はトランジスタのベースに接続し、もう一方を当コンデンサ:C1によって交流的にGNDレベルに接続します。
なお、この部分は音量調節された低周波信号(音声信号)の入力でもあるため、C1の値が大きいと低周波信号(音声信号)もGNDに流れてしまい音声レベルが低下し、逆にC1の値を小さくし過ぎると異常発振を起こしやすくなります。
※当回路におけるGNDレベルは電源(乾電池)のマイナス側になります。
C4 100pF トランジスタ:Tr1のコレクタから出力される高周波信号と低周波信号のうち、高周波信号だけをコンデンサ:C4の回路側へ導くようにします。
コンデンサは低い周波数を通しにくく、高い周波数を通しやすい。という性質を利用しています。
R3 10KΩ コンデンサ:C4から流れる高周波信号の負荷抵抗です。
多くのレフレックスラジオ回路は2つのダイオードを使って、高周波電流が流れてくるC4の充電/放電をしていますが、2つのダイオードを使った検波回路は異常発振に陥ってしまう確率が高く、今回は多くの実験試作を行なって1つの検波ダイオードで実用にしました。この場合、一方向にしかC4の電荷が溜まらないように負荷抵抗:R3を接続しておきます。
R3の抵抗値は試作をした結果ですが、異常発振を起したり感度を調整する場合は変更を検討して下さい。
D 1N4148 検波として用いるシリコンダイオードです。
ゲルマニウムダイオードの電位障壁は約0.2Vに対して、通常のPN接合シリコンダイオードの電位障壁は約0.6Vなので通常はラジオの検波に使われませんが、僅かにバイアス電流を流して見掛けの電位障壁を下げて検波できるようにしています。
何故このような部品数を増やすことをしたのかと言いますと、ゲルマニウムダイオードや高周波ショットキーダイオードを用いた場合、部品による感度差が目立ったためです。
当回路であれば1N4148に限らず多くの高速スイッチングダイオードが使えて感度差も殆どないことを確認しました。
R2 1MΩ シリコンダイオードを検波として使えるように僅かに電流を流すためのバイアス抵抗です。
このバイアス電流は(抵抗:R2)〜(シリコンダイオード:D)〜(抵抗:R3)の経路で流れます。
C3 0.47uF シリコンダイオード:Dは抵抗:R2によって僅かに直流バイアスが掛かっていて、検波された低周波信号(音声信号)を直にボリュームに接続してしまうと直流バイアスに狂いが生じてしまうのでコンデンサ:C3によって直流を阻止して低周波信号(音声信号)だけを通過させます。
尚、C4の説明で、「コンデンサは低い周波数を通しにくく...」と記述しましたが、コンデンサ:C3はC4に比べて充分大きな値なので低周波信号(音声信号)を通します。0.1uFは100pFの何倍なのか電卓で計算してみて下さい。
VR 10KΩ-A 音量調節を行なわせるボリュームです。VRはバリアブルレジスタ(可変抵抗)の略です。
今回は検波後に直ぐに音量調節させることにしました。そのほうが異常発振を起こしにくかったからです。
C2 0.47uF トランジスタ:Tr1のバイアス抵抗:R1の直流成分がボリューム:VRに流れ込むとトランジスタのバイアスに狂いが生じて動作しなくなるのでコンデンサ:C2によって直流を阻止し、低周波信号(音声信号)のみ通します。
コンデンサ:C2を通過した低周波信号(音声信号)はバーアンテナ:L1の2次巻線を介してトランジスタ:Tr1のベースに入り低周波増幅を行なわせます。
L2 4mH チョークコイルになり、トランジスタ:Tr1のコレクタから出力される高周波信号と低周波信号のうち、低周波信号だけをコイル:L2の回路側へ導くようにしています。
コイルは低い周波数を通しやすく、高い周波数を通しにくい。という特性を利用しています。
R4 1KΩ トランジスタ:Tr1の負荷抵抗です。
C5 0.047uF コイル:L2からは低周波信号(音声信号)だけではなく、僅かに高周波信号が漏れています。
この僅かな高周波信号が次の段で増幅されると発振トラブルを起こしやすくなるのでコンデンサ:C5によって高周波成分をGNDレベルに落とし、高周波信号レベルを低減させます。
C6 2.2uF カップリングコンデンサになり、トランジスタ:Tr1とTr2の直流バイアスが双方で影響しないように直流を阻止し、低周波信号(音声信号)のみ通します。
Tr2 2SC1815-GR このトランジスタでスピーカーを駆動する電力増幅回路を構成します。
トランジスタには、B(ベース:注入)、C(コレクタ:収集)、E(エミッタ:放出)の3本の電極があって間違えると動作しないよ。
R5 330KΩ トランジスタ:Tr2のバイアス抵抗です。
R6 100Ω トランジスタ:Tr2にエミッタ抵抗を設けて簡易的な電流帰還バイアスにしています。
ブリーダ抵抗を使う電流帰還バイアス回路より性能(hfeのバラツキ抑制・温度特性)は劣りますが、トランジスタのhfe(電流増幅率)の選定に注意すれば何ら問題ありません。
C8 220uF エミッタ抵抗を設けたことで増幅度が低下しますので、コンデンサ:C8を並列に接続して交流的にエミッタ抵抗:R6を見掛け小さくして増幅度の低下を防ぎます。
T ST-32 スピーカーを駆動するための小型アウトプットトランスで、スピーカーとインピーダンスを合わせます。
C7 220uF 電源ラインと並列に接続するデカップリングコンデンサです。
このコンデンサによって乾電池の内部抵抗の上昇を抑えて、音質劣化や異常発振の対策をします。
Jack イヤホンでもラジオ放送を楽しめるようにイヤホンジャックを設けてみました。
BATT 今回は006P型9V乾電池を使って稼動させました。


当回路のトランジスタのバイアス回路は簡易的なため使用するトランジスタや電流増幅率:hfeによって音量・感度が大きく変化します。
実験は一貫して2N3904を使ってきましたが、最終的にhfeをランク付けしている2SC1815にしました。その評価を下表に記します。
トランジスタによる感度・音量の差が大きいため2SC1815以外のトランジスタを使う場合は事前に確認しておくことを勧めます。

トランジスタ hfe
電流増幅率
トランジスタ:Tr1(ラジオ部) トランジスタ:Tr2(電力増幅部) 2石とも同じトランジスタ
を使った場合の評価
回路電流
(n=3)
評価 回路電流
(n=3)
評価
2SC1815-O 70〜140 0.96mA 2SC1815-Yより
音が小さく、感度が悪い。
2.83mA 音が小さく、歪っぽい。 絶対に嫌だ。
使いたくない。
2SC1815-Y 120〜240 1.23mA 2SC1815-GRより
音が小さく、感度が悪い。
3.58mA 音が小さい。 2SC1815-GRを買いに行くわ。
2SC1815-GR 200〜400 2.43mA デフォルト。 7.18mA デフォルト。 デフォルト。
※これで作ることにした。
2SC1815-BL 350〜700 3.75mA 2SC1815-GRより
音が大きく感度も良い。
9.95mA 音が大きく、音質も良い。 電池の消耗が心配だから
妥協して2SC1815-GRにする。


ラジオ部(Tr1)と電力増幅部(Tr2)のインターフェイスについて、CR結合や、トランス結合、直結回路を繰り返し実験しました。
トランス結合はコスト高で音は歪っぽく、DC帰還の直結回路はトランジスタのhfrのバラツキは抑えられるものの感度は良くない感じを受けました。
結局は一番簡単なCR結合にしました。
パーツ定数は実用範囲で発振しにくいとカットアンドトライで決めましたが、リード線の這い回しで発振することがありますから製作のページで確認して下さい。


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