トランジスタによるドライブ回路

デジタル回路の各種ゲート出力や、PICなどマイクロコントローラーから、リレーや電磁クラッチ、ソレノイド、スピーカーなどを動かすには無理があります。
各種ゲート出力や、PICなどマイクロコントローラーでは発光ダイオードを駆動させる程度の負荷電流(数10mA)しか扱えないためです。
このことは事前にどの程度の電流が扱えるかデーターシートで確認しておく必要があります。
データーシートにはMaximum output currentや最大出力電流、最大負荷電流などと記載されているでしょう。

リレーや電磁クラッチ、ソレノイド、モーター、スピーカーなどを負荷とするにはトランジスタによるスイッチ回路が手っ取り早い方法です。



上図回路はその基本となるものです。
ベース電流×hfe=コレクタ電流(負荷電流)となりますが、このようにトランジスタをスイッチとして用いるにはオーバードライブといって、定格負荷電流よりも多くのベース電流が流せるようにしておきます。

即ち、負荷電流が50mA、使うトランジスタのhfe(直流電流増幅率)が100の場合は、ベース電流は丁度の0.5mAではなく、2〜3倍の1〜2mAとします。

上図にてベース電流を決定するのは抵抗:Raとみていいでしょう。実際には抵抗:Rbにも流れ込みますが厳密に算出する必要はないと思います。

Rbは万一ロジック側がハイインピーダンスに陥った場合のトランジスタの誤動作防止です。マイクロコントローラーなどではI/O設定などでハイインピーダンスになる状態がありますからRbは必須といえます。
Rbは2Ra〜10Raの間で選択するといいでしょう。

Ra=(コントロール電圧−VBE)/((負荷電流×K)/hfe)  ※係数Kは2〜3、VBEは約0.65V

となります。問題となるのはトランジスタのhfeでしょう。

例として2SC1815のYランクを使用するとします。データシートではYランクのhfeは120〜240と記されています。
ここで、最低となる120で算出してはいけません。これは常温におけるhfeであることに注意します。hfeは温度が下がると低くなります。



即ち、120で算出してしまうと、「普段は動作していたのに、寒い季節の朝一番だけ動作しないことがあるなぁ(トルク不足だなぁ)」となります。
ここではデーターシートで最低のhfe=70で算出するべきです。

2SC1815Yを使って80mAの負荷を5Vロジック回路から駆動する場合はRaは約2KΩ(係数K=2とした)、Rbは4KΩ〜20KΩとなります。

尚、上図で負荷と並列になるダイオードは逆起電力防止用で、コイルなどの誘導性負荷の場合は、トランジスタがOFFになった時にトランジスタが破損するのを防ぐものです。

当然ながらトランジスタの最大コレクタ電流とコレクタ損失の範囲内となります。

更に負荷電流を多く流したい場合はダーリントン回路を組むか、下図のようなダーリントン構成のトランジスタを用いるようにします。
ダーリントン構成の総合のhfeはhfe1×hfe2となります。



ダーリントントランジスタである2SD1222(最大コレクタ電流3A、放熱器使用コレクタ損失15W)では低温時でもhfeが1000を下回りません(下図)。
注意としてはRaを算出する場合はVBEを約1.3Vとします。。



また、ダーリントン構成のトランジスタでは上図のRbが省ける場合があるのでデーターシートの等価回路を確認しておきます。
2SD1222ではRbを省けることが判ります。



ロジックゲートからのパワー駆動だけを目的にしたRa、Rbともに内蔵したトランジスタやICも存在します。
例として「デジタルアラームクロック」のページではトランジスタアレイとしてTD62003APを使用していますので参考にして下さい。

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