Hi-Fiで楽しく使えるヘッドホンアンプ...page.1/6


はじめに...

Hi-Fi(High Fidelity:高忠実度)な音楽再生を目指しながら、オーディオに興味がない人も楽しんで使えるようにしたヘッドホンアンプです。
トグルスイッチをパチパチ切り替えることが楽しくなるよ。



ホワイトノイズの対策で一部回路定数変更と抵抗追加を実施しました。

当ヘッドホンアンプを掲げてから二人の方から無心号時に「サーーッ」又は「スーーッ」といったホワイトノイズが聞えるとのご指摘を頂きました。
しかし私が所有するヘッドホンでは聞く事ができないで来ましたが、指摘を頂いた2人目の方より製作されたアンプとヘッドホンをお借りすることができました。

インピーダンスや周波数特性に全く関係なく、透通った再生音かつ聴感上で高域まで綺麗によく伸びているヘッドホンほどホワイトノイズがハッキリ聞えることが判りました。耳を休ませてボリュームを絞って無音に集中しているとホワイトノイズが気になります。

確認したところ非反転増幅部がホワイトノイズの源になっていると判りました。
そこで、以下の3項目でホワイトノイズ対策を施して全てのページを書き換えます。
書き換えた部分は回路図に青文字で示した通りです。
尚、回路変更後もローブースト・ハイブーストについて全く影響しませんので安心して下さい。

■利得設定の抵抗:R8,R9を変更する
利得設定の抵抗値を下げて抵抗による熱雑音を下げる。また、オペアンプの入力換算雑音電流との積も低く抑えられる。
ここの抵抗はオペアンプの負荷にもなるので極端に下げることはできない。
ここでは初期に掲げた6.8KΩ,62KΩから1KΩ,9.1KΩに変更した。
■IC1とIC4にバイポーラ入力のオペアンプを使用する
入力換算雑音電圧はバイポーラ入力オペアンプが勝り、入力換算雑音電流はFET入力オペアンプが勝るものが多い。
当回路の扱うインピーダンスは比較的に低い(数KΩ程度)ので前者のバイポーラ入力オペアンプが有利と考えられる。
■出力抵抗27Ωを接続する
ホワイトノイズの根絶は不可能なのでアンプ全体のレベルをこの抵抗によって下げ、その損失分は入力の音量調整で補う。
損失量はヘッドホンのインピーダンスで変化するがボリュームで充分補えると思われる。
この抵抗はあまり大きくすると再生音の艶が薄れる気がするので51Ωまでが限度と思う(私の聴感)。

私の手持ちのオペアンプで確認したところ、IC1,IC4においてOPA2134,OPA2604はホワイトノイズが聴こえやすく、NE5532,NJM4580のほうがローノイズです。
耳を休ませて静かな環境でいろいろなオペアンプのホワイトノイズを聞き比べてみましょう。

ところで、当アンプのホワイトノイズの源はIC1(IC4)によるものだと私は判断しましたが、使用されるオペアンプによってはヘッドホンドライバー部のIC2、IC3(IC5、IC6)で発生している可能性もあるわけで、この場合の確認方法としてはIC1、IC4をソケットから抜いてノイズの有無を聞いてみて下さい。IC1、IC4を抜いてもヘッドホンドライバーIC2、IC3(IC5、IC6)の入力端子はR8、R9を介して仮想GNDに接続されていますから出力にDC成分が出ることはありませんので安心して確認できます。
万一、ヘッドホンドライバー部でノイズが生成されていた場合はIC2、IC3(IC5、IC6)のオペアンプ変更で対処願います。

改めて製作されたアンプとヘッドホンを快くお貸しくださったりょうたさんに感謝申し上げます。

自作オーティオは作りっぱなしというのは殆どなく途中で回路も使用部品も変更することは多々あることをご理解願います。
数あるオペアンプの中から自分にあったオペアンプを探してみて下さい。



概要

オペアンプ1回路だけでローブーストを効かすと出力が飽和して歪感を伴う音になるため、ボルテージフォロワを4回路並列にしてパワフルに駆動させました。
デスクリートによる電流増幅回路はバイアス回路で悩んだり、専用のパワーバッファICは高価で入手も困難だと思ったからです。
回路は全てオペアンプで作りますから、ひいきにしているオペアンプのサウンドを楽しめます。

ローブーストとハイブーストはスイッチを使って有効/無効を切り替えるようにしました。周波数特性とブースト量は私がいろいろな音楽を聴き込んで決めた定数です。
トーンコントロール回路などボリュームを使った連続可変にしなかった理由は、「音」に拘るならばフラットな周波数特性を大切にするためトーンディフィートスイッチは欲しいよね?
しかし、そこまで複雑な回路にすると成功率が低下すると思ったからです。
実際に完成させると、スイッチによるトーン調整は本当に使い勝手がいいよ!

電源は扱い易さから単一電源にして、外部から供給させることにしました。




回路図

PDFで掲げます。





回路の説明

音楽信号は10KΩAカーブのボリュームで音量調整してボルテージフォロワに入ります。
抵抗R1は発振防止です。抵抗R2はオペアンプのバイアス抵抗になり実質この抵抗の値が入力インピーダンスと考えていいでしょう。
C1は入力のDC成分が流れ込まないようにするためのカップリングコンデンサです。
R2とC1によりカットオフ周波数は約2.2Hzとなります。

カットオフ周波数=1/2πCR 〔Hz〕


初段にボルテージフォロワを設置した理由は次に接続するCRパッシブフィルターによるものです。
これはCRパッシブフィルターは低インピーダンスで信号を加えないとノイズや周波数特性に不利になるためです。

ここのCRフィルターによる伝送損失(フラット時)はR4とR5により約10dBになります。CRフィルター部の周波数特性については後述します。

回路全体に利得を持たせるために非反転増幅回路を使いました。
様々な音楽ソースや使い勝手を考慮して10dBの利得があればいいと考えたのでCRフィルターの損失と合わせて非反転増幅回路の利得は約20dBに設定しています。
利得はR8とR9で算出できます。

利得=20×log10((R8+R9)/R8) 〔dB〕


出力はボルテージフォロワを4回路並列接続して強力にヘッドホンを駆動しました。
ある程度大きな音で音楽を聴きながらローブーストを効かせてもサチることはありません。
抵抗R10〜R13は各オペアンプが平均して出力するようにするものです。


電源は外部電源として、仮想グランドレベル生成は成功率を考えて簡易的な回路にしました。
時定数の関係でC4、C5のコンデンサの容量は大きいほうが望ましく今回は1000μFを使いました。

R14、R15はコンデンサに掛かる電圧を1/2に合わせるための分圧抵抗です。
この抵抗は1/4Wの1KΩにしましたので電源電圧は15V程度までにして下さい。
発熱が心配される場合または15Vを超えて稼動する場合は1/2W品か1W品を使って下さい。

またこの分圧抵抗を2.2KΩ以上とするのは好ましくありません。
特にオフセット電圧が大きなオペアンプを使って大音量で音楽を聴いていると中点電位が刻々とVcc又はVee側に振られて割れた音になってしまいます。


電源電圧は、使用するオペアンプの最低動作電源電圧〜15V程度までのACアダプターを使います。
オペアンプの最低動作電源電圧を調べておいて下さい。

例えば最低動作電源電圧が±2.5V〜ならば、ACアダプターの電圧は5V以上でなければ動作しません(5V未満でも動作はするが音が割れる)。
9V又は12VのACアダプターがあれば殆どのオペアンプが使えるでしょう。最低動作電源電圧が低いオペアンプならば6VのACアダプターでも問題なく動作します。




CRフィルター(イコライザ)

下図のようなCRフィルターで構成しました。






ハイブーストSWをOFF(ハイブースト無効)、ローブーストSWをON(ローブースト無効)にしたときは下図のようにR4とR5だけで構成されるアッテネーター回路になることを回路図から読んで下さい。
R4とR5による減衰量は約10dBになります。
従って−10dBのレベルを0dBとすれば、ローブースト、ハイブースト等で行なわれる最大ブースト量は約10dBということになります。






ローブーストはR5に直列にコンデンサを接続します(下図)。






ハイブーストはR4に並列にコンデンサを接続します(下図)。







上記、CRによる周波数特性は算術せずに、様々なジャンルの音楽を聴き込んでカットアンドトライで定数を決定しました。
実回路のR6はローブーストのブースト量を抑え込むものです。同様にR3はハイブーストのブースト量を抑え込むものです。

次にレスポンスを示します。


【フラット時】




【ローブースト時】・・・青線が当回路定数(R6=10KΩ)、赤線はR6=∞Ω時(R6未接続)




【ハイブースト時】・・・青線が当回路定数(R3=1.5KΩ)、赤線はR3=0Ω時(R3ショート)




【ローブースト&ハイブースト時】・・・青線が当回路定数、赤線はR3=0Ω・R6=∞Ω時





オリジナルのCRフィルター定数にする場合はR4とR5はそのまま(減衰量-10dB)にして、その他の部品定数をカットアンドトライしてみて下さい。
尚、ハイブーストとローブーストを共に有効にした時、1KHz(1000Hz)付近が大きく持ち上がってしまうと単純に音量が大きくなっただけと錯覚するので、ハイブーストSWでは明らかに高域だけが増大、ローブーストSWでは明らかに低域だけが増大するように決定することがポイントです。



【参考のレスポンス】

R6=∞Ω(R6未接続)、赤・・・C3=0.1μF、緑・・・C3=0.15μF、青・・・C3=0.22μF




R6=10KΩ、赤・・・C3=0.1μF、緑・・・C3=0.15μF、青・・・C3=0.22μF




R3=0Ω(R3ショート)、赤・・・C2=4700pF、緑・・・C2=3900pF、青・・・C2=3300pF




R3=1.5KΩ、赤・・・C2=4700pF、緑・・・C2=3900pF、青・・・C2=3300pF




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